CALLing Asia


The 4th Annual JALT CALL N-SIG Conference on Computers & Language Learning

May 21-23
Kyoto Sangyo University, Kyoto

JavaScript Enhanced On-line Writing Trainer

ジャバスクリプトを利用したオンライン英語ライティングトレーナー

Hideto D. Harashima (hideto@maebashi-it.ac.jp)
Maebashi Institute of Technology

Summary

After learning just how to translate Japanese sentences into English under the lesson title of "English Writing" in high school, quite a few of Japanese college students are encouraged to write "free" essays in English for the first time in their college English lessons. However, they often find themselves at a loss. The presenter has witnessed over the years how such students spend the first few hours of a lesson in vain; they only contemplate on how to start an essay without writing a word.

The presenter regards such a situation extremely wasteful of time and energy. What they need is a good starter program which facilitates an easy take off on writing. Having this in mind, the presenter designed a series of web presentations for his students to be navigated for basic essay writing in English.

With a help of JavaScript enhancement on the web pages, students can navigate through questions in English, which are relevant to each topic, by typing in their answers, consulting hidden prompts from time to time. As they go through this process, the students find themselves writing the first few paragraphs of an essay without pain or wasting of time. In addition, an on-line J/E dictionary, developed and permitted for use by Jim Breen, is pasted on each of the presentations and it is extremely useful for students with limited English vocabulary.


1. 前橋工科大学の英語ライティング指導

インターネットの普及と伴に英語ライティング指導の重要性が益々叫ばれている。本学においても開学以来、1−2年生を対象として英語必修科目「リスニング・アンド・ライティング」を設置し、その中のライティング指導で200語以上のエッセーを課している。これはコンピュータラボにおいてワープロソフトを使い、1学期(半期)で4つから9つのエッセーを提出させるものである。ワープロ使用により校正・編集作業が容易にできるので、一つのエッセーにつき4、5回推敲を求められることもしばしばあり、最終的にはA4用紙のエッセーを10〜30ページ提出することになる。

2.大学生と英語エッセーライティング

この授業で目に付くのは学生達がまとまりのある英語文章を書くということに殆ど慣れておらず、どう書き進んだら良いか途方に暮れている場面である。そこで発表者は学生達が高校でどの様な英作文指導を受けて来たのかをアンケート調査してみた。

調査学生総数 279人
質問項目
Yes No
1. あなたは高校の時「英作文」の授業を受けましたか? 88人
(32%)
175人
(63%)
2.受けなかった人は、他の英語授業(英文法、講読等)の中で英作文を扱いましたか? 114人
(65%)
60人
(33%)
3.それらの英作文は日本語文の英訳の様なスタイルでしたか (Yes)、
それとも自由なエッセイスタイルでしたか (No)?
200人
(79%)
45人
(18%)
4.あなたはコンピュータを使ったことがありますか。 185人
(66%)
28人
(10%)

上記調査で分かることは、高校で授業科目として或いは部分的にも英作文を学んだ者は合わせて202人(72%)存在したが、それらの学習のほぼ8割は日文英訳スタイルの翻訳訓練であったことである。この数字に高校で全く英作文学習に触れなかった60人を加えると262人(94%) の本学学生は英語のエッセイライティング未経験者ということになる。調査学生の約7割が県外出身学生であることからおそらくこの状況は他の日本の大学においても同様であると推察できる。学生たちがこうした背景を持ちながら大学で英語ライティングの授業を受ける際に大きな戸惑いを持つのも無理からぬ話しかもしれない。事実、今学期の受講者を対象とした調査によると、実に8割の学生が英語を「書く」ということに「特に苦手意識がある」と答えている。(アンケート結果詳細

これまでの指導経験で学生がつまずくポイントは2つ在ることが分かって来た。

a. テーマが与えられてもそれについて具体的にどんなことを書けばいいのか分からない。
b. 考えが湧いてもそれをどの様に英語で表現したら良いか分からない。

この2つのブロックに阻まれて学生は最初の数十分から数時間はただボーッと白紙画面を見詰めているだけという場面も多く見られた。工学部ということもあり、7割弱の学生がこの授業を受ける前にコンピュータ操作を経験しており、操作の戸惑いが彼らを間誤付かせているとは思えない。何も作業が進まず、ただ時間を浪費している様子を見るのは忍びない。「何でもいいから書き始めなさい。」と言ってみるのだが、助けにはならないと実感した。

3.求められる指導

ではライティング指導者としてこの様な学生達にどの様に指導することが効果的であろうか。それは勿論、何の導入指導もなくいきなり長文を書かせる様なものではない筈である。未開の地に踏み込ませるには案内人が必要である。とは言え強制的な指示に終始してはいけない。学習者があるテーマについて自然に自分の考えをまとめ、それをどう表現したら良いかについて、自ら自立的・選択的に学んで行けるようなプログラムが在れば非常に有益であるに違いない。

おりしも本学では今年四月より新しいコンピュータラボ(NTラボ)がオープンし、インターネットが自由に利用でき、また発表者も自分のウェブサーバを持てる環境が整った。この機に発表者はジャバスクリプトを利用した英語エッセーライティング初期指導のためのオンラインライティングシミュレーター "Hideto's Writing Trainer" を制作した。ウェブインターフェイスによるオンライン教材提供という形は学習者が個々に自立的・選択的に学習を進めて行ける学習形態である。学習者主体の学習形態はまさに自主的なライティング活動を促すのに相応しいと考えられる。

4.英語エッセーライティングトレーナー

Hideto's Writing Trainer は日本の学生がまず自分についての様々な面を英語で紹介する(書く)ことの手始めの部分を補助することを目的としている。そのために身近で基本的なエッセートピックとして、導入的自己紹介、大学、性格、体格・容姿、趣味・興味、経歴、家族、日常生活、クラブ活動、アルバイト、友人、将来の夢、の計12のトピックを設定した。学生から集めたアンケートでは政治・社会問題などのテーマについても書いてみたいという希望も数件見られたが、これらについてはライティングトレーナーで訓練を積んだ後に応用として取り組んでもらいたいもので、このライティングトレーナーの目的はあくまでエッセーライティングの序走路を提供することと定めた。

各テーマごとに5つの基本的な質問が与えられ、学生はJavaScriptで作られた書き込み窓でそれぞれの質問に回答して行く。自分の回答をチェックし、なお他の表現についても学習できるようプルダウンボックスにより複数の「標準解答例 (possible answers)」が参照できるようになっている。必要に応じて語彙リスト等のリンクが貼られており瞬時に利用することもできる。学習者はここで自分について語る際必要な基本表現を実際書いてみることを体験し、英語を書くということの最初の緊張をほぐしてもらうと伴に、必要なフレーズや単語を学習することになる。

5問の骨格的な質問ではまだ他に何を書けば良いか分からないという学習者のために、トレーナー各ページの下には更なる guidelines としてテーマに沿った20ほどの質問のページがリンクしてある。ここを訪れることによって学習者はどの様に話題を膨らませて行けば自然にエッセーがまとまって行くのかが見えてくる仕組みになっている。

更にどうしてもエッセーの全体像がつかめないという学習者のためには同じくページ下に examples として各トピック別の標準的なエッセーの見本がリンクされており、これを参考にして学習者はエッセーのトータルイメージがつかめるように配慮されている。

このトレーナーにはまたオンライン辞書が貼り付けてあり、簡単に和英・英和の辞書が利用できる。このオンライン辞書はオーストラリアモナシュ大学の Jim Breen 助教授の開発したもので、氏の許可を得て使用させていただいている。発表者の知る限り無料のオンライン辞書の中では最もシンプルなインターフェイスで日本語も表示でき、非常に使い易いものである。発表者は経験から学生達全員に毎回英和・和英の両辞書を必ず持参するように指導するのは至難の業であり、非現実的であると悟るに至った。この様なオンライン辞書が利用できると学生の負担も減り、辞書を引くことを厭わず楽しんでする様子が伺えるようになった。

5.学生の反応

このトレーナーの書き込み窓に書き込むことは本番(草稿や清書)ではなく単なる練習だという意識を持つと、学生達はたじろいだり構えたりすることなく、わりとすらすらと英語を書き始める様子が見られた。またワープロ上で本番を書くことも軽快に進められている様である。これはトレーナーを使用する前には見られなかった事である。現在このトレーナーで学習中の学生に調査したアンケートによると、98%の学生がこのトレーナーが英語エッセーライティング活動の「助けになる」か「非常に助けになる」と答えている。(アンケート結果詳細

6.参考文献

「Java Script入門」、 河西朝雄、 技術評論社、 1996
「Java Script ポケットリファレンス」、 古籏一浩、 技術評論社、 1997
「ウエブデザイナーのためのJavaScript ハンドブック」、 Nick Heinle、 オライリージャパン、 1998
「第37回LLA全国研究大会 JavaScript ワークショップマニュアル (非売品)」、 東 淳一、 1997

7.アクセスURL

http://www.maebashi-it.ac.jp/hideto/English/challenge/write1.htm

(ミラー) http://202.236.153.60/English/challenge/write1.htm